農地の相続では、通常とは異なる手続きが発生します。
何かと骨の折れる土地相続に、さらに「農地」という条件が加わって、お困りの方も多いのではないでしょうか?
ここでは、農地を相続したときの基本的なルールと、合わせて知っておきたい納税猶予の特例についてご紹介します。
目次
すべての農地を守る「農地法」
すべての農地は「農地法」によって使用上のルールが取り決められています。
農地法とは、農地を保護し、適切な利用の促進を目的とする法律です。
もし、農地の所有者や利用状況がわからなくなれば、国内の食料供給も管理できなくなってしまいます。そのため、農地を相続したときは、農地法のルールに従い、相続によって所有者が変わったことを知らせなければなりません。
農地を相続することを必ず知らせる
農地を相続したときは、必ず農業委員会へその旨を届出なくてはなりません。
相続した日から10カ月以上届出を怠ると、罰金が課せられてしまいます。
この届出以外は特別な手続きの必要はなく、名義変更も事由が相続であれば、農業委員会に許可を得ずに行うことができます。
しかし、遺言書に従って法定相続人以外が相続する場合や、生前贈与で所有権が移る場合などは、農業委員会の許可を得なければすべて無効となってしまいますので、間違えないようにしましょう。
平成21年に農地法が改正されるまでは、相続で農地を受け継いでも、届出の必要はありませんでした。
しかし、それでは農地の利用状況がわからなくなるばかりか、荒廃して使えない農地を増やすことにも繋がりかねません。
そこで、相続でも届出を行うことが法改正により義務付けられ、さらに罰金も加わるなど、厳重なルールが設けられたのです。
農地相続の届出ルール
農地を相続したことの届出は、自治体の農業委員会で行います。
届出には
- 相続人の氏名・住所
- 農地の所在地などの情報
- 相続したことを証明する書類
- 取得した日
などが必要です。
農地の所在地などの情報は、届出の際に持参する不動産登記簿にまとめられています。
もし、農業委員会への届出期限である10カ月よりも遺産分割協議が長引く場合は、相続人全員で届出を先に済ませておき、協議終了後に再び届出を行うことができます。
農地の相続税と特例
農地を相続したときも、当然農地に相続税が課せられます。
しかし、高額な相続税を納付するために、農業従事者の生活が困窮すれば、最悪の場合は廃業してしまいかねません。
そのような形で国内の農地を失わないために、農地には相続税の納付に猶予特例が設けられています。
この猶予には期間の定めはなく、猶予が認められている間は税金を納める必要はありません。
「納税猶予の特例」を受けるための条件
<被相続人>
- 亡くなる日まで農業経営を行っていた
または
- 農地を生前一括贈与し、かつ贈与税の猶予特例を受けていた
<相続人>
- 相続税の申告期限までに農業を営んでいる、かつ農業経営を継続することを農業委員会に認められた
- 相続税の申告期限までに、土地を農地として特定貸付(※)していた
- 農業に従事していた相続人が亡くなった
- 相続人が農業に従事し、20年継続した
- 農地を生前一括贈与し、かつ贈与税の猶予特例を受けていた
※…他人に農地を貸して農業に利用してもらうこと
納税が免除になることも
さらに、猶予の特例を受けたあと、
のいずれかに該当していれば、納税そのものが免除されます。
しかし、猶予期間中に農業を辞めたり、農地を譲渡したりすると、猶予が取り消され、相続税を納めなくてはなりません。
猶予の特例を受けるための手続きは?
特例を受けるためには、農業委員会にて
「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」を受け取り、
税務署に提出する必要があります。
また、相続後も継続して農業に従事しているか確認するため、「相続税の納税猶予の継続届出書」
の提出が、3年に1度、税務署から求められます。
その際も、再び農業委員会で証明書を発行し、税務署に提出しなくてはなりません。
この3年に1度の確認は、猶予を受けている限り継続し、提出を怠ると猶予が取り消されてしまいますので、忘れないように準備しておきましょう。
まとめ
農地は、国内の食料生産の要として、厳重に管理されています。
そのため、農地を相続したあとは、その後も農地として使用するのか、誰が所有者となったのか、必ず農業委員会に届出を行わなくてはなりません。
農業委員会への届出と合わせて、猶予を受ける条件が揃っていることも確認しておき、スムーズに農地の相続を済ませましょう。
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